■無茶々園について今から40数年前、愛媛県西予市の農業後継者数人の若者は現代農業への疑問から農家らしい生き方を模索する中で有機農業に出会いました。「百姓の特権は自然の中に溶け込んだ生活、額に汗して働く喜びを以て、一生を土と親しみ、土に還ること。農薬や化学肥料で命を切り売りするのが農業ではない」という思いから、同じ愛媛県内で自然農法に取り組む福岡正信氏(著書・わら一本の革命)に学び、無農薬・無化学肥料栽培を始めました。1975年、最初に収穫した伊予柑は外観が悪く一般流通ではそのまま売ることもできず、大半は加工品となりました。
有機農業を成功させるには、できた生産物を見合った価格で買ってもらう必要があります。1977年、松山市の自然食品店で無茶々園が希望する価格で初めて伊予柑を買ってもらうことができました。この店との出会いから、理想の農業に近づくには農業問題から出発して、食生活、健康、社会環境、そして教育までを総合的に考える必要があるのではないかという考えに変わりました。無茶々園の運動は、単なる農産物の生産方法を変えるだけの活動ではなく、まちづくりをも含む運動にまで広げていかなければならないという大局的な見方をするようになります。
1980年には大手商社が町にLPG基地を作ろうとしましたが、自分たちの目指すまちづくりとは方向性が違うという思いから反対運動にも参加しました。この運動は自立した地域作りを目指すきっかけとなりました。
その後、ジュースなど加工品の製造販売、真珠の販売、シイタケ栽培、福祉事業所の運営、国内外からの新規就農希望者の受け入れを始めたり、と活動にも幅が広がっています。現在、無茶々園は環境破壊を伴わず、健康で安全な農作物の生産・販売だけでなく、yaetoco(ヤエトコ)ブランドの化粧品をはじめとする商品開発や福祉施設の運営、消費者と生産者を結びつける産直事業などを通じて地域社会へ貢献しています。「地域協同組合無茶々園」はその活動が評価され、2016年には、 農林水産省が主催する農林水産祭のむらづくり部門で天皇杯を受賞しています。